美術館と百科事典
子供の頃、ひどい田舎にいたことは前回書いたが、その頃、家にいながらの楽しみは、漫画の他に、百科事典があった。
私の両親は、おそらく教育熱心であったのだろう、子供の私に百科事典を買い与えた。
今はなき、ジャポニカ大日本百科事典、全23巻(確か)である。
これは、適当なページを捲って、そこに載っている項目をトリガにして、次々とページを繰って読むのが楽しかった。
で、この百科事典、別巻として世界美術百科と日本美術百科とが付属されていた(確かこんな書名)。
付属といっても、型は百科事典本巻よりやや小さめだが、百科事典本巻と同じハードカバー、厚さにして数cm(数百ページ)という立派なものである。これに、紀元前から現代までの美術品、絵画の類がびっしり載っているのである。
私は子供の頃から絵が好きだったらしく、その本を読み耽った。
ただ、当然のことであるが、全ての画は概ね縦横数cmくらいのサイズ、大きくてもA4サイズ。要するに実寸に比べて非常に小さい。サムネイルですな。画の脇などには、実際のサイズが表記してあり、それを元に実際の大きさを想像することで我慢していた。
時は経ち、今この歳になって、海外に行く機会が増えてきた。
主にヨーロッパ。具体的には、UK、ドイツ、オランダ、チェコ、そしてオーストリア。
行く先々で美術館に入る。
ロンドンではナショナル・ギャラリー、テート現代美術館、オランダではゴッホ美術館、チェコではプラハでミュシャ美術館ともうひとつ大きなところ(名前忘れた)、…云々。
とにかく親の仇のように美術館に行った。
そして、子供の頃百科事典に付属の美術百科で見た数々の絵画の本物を見た。
やはりね、あまりにも当然で、今さら言うまでもないことではあるし美術百科の数cmサイズの画と比較すること自体が間違っているのだが、本物の迫力は桁違いだし、訴えかける力がものすごい。
でもあれだな、子供の頃に美術百科で散々見ておいたから、実物を見た時の感慨もひとしお、ということなのかもしれない。
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