「初恋ゾンビ」雑感(第90話「ハッピーエンドください」)
タロウは少しばかり朴念仁の面もとあるが、むしろ、イブにゾッコンで、他の女子は眼中にないといったところかな、少なくとも表面的には。
イブにあの衣装を着せたのは、間違いなくタロウである。タロウは、江火野さんとのシーンが頭から離れない、というのも当然あろう。だが、あのシーンをイブと演じてみたかったのではなかろうか。
しかし、イブにゾッコンにしては、いや、ゾッコンだからこそか、タロウ母があのシーンをPCで再生しようとすると、全力で回避しようとし、それはまるで浮気を見つかるまいとしているかのよう。こんなシーン、前にもあったような…
そして、ただ、イブが例のシーンを観ていない、ということの真実にいつ気付くか。
ナストが気にするから、というもっともらしい理由で件の画像の露出は避けられ、イブとデートする必要もなくなったが、イブの衣装を見てしまったタロウは、結局出かける。この姿を見たら、そりゃあ一緒に出掛けざるを得ないだろうと。
そして!デート先で、まさかのキスシーン!!未遂だけど。
この素晴らしい見開きページは、「初恋ゾンビ」始まって以来最高のシーンであることは、間違いない。ぜひカラーで見てみたい。
しかし未遂なのだ。
イブがタロウにリアルでキスできなかった理由は、タロウの方にしてみれば不意打ちで、平たく言えば「心の準備ができていない」状態だったからなのではなかろうか。
もしかすると、お互い本気でその気なら、触れることくらいはできたのかも知れない。
タロウは「べつにそれでもいいや」と思い、そして「いつかできたらいいのに…」と思う。これは現在のタロウの本心であろう。
では、これからは、イブを実体化させる方法を模索する、という流れもアリか??そしてそれ(実体化)は可能なのか?可能であったとして、実現したらそのときは???
この物語は、「初恋ゾンビとしてのイブ」という、実体のない存在をめぐる物語でもある。
そのためか、其処此処かしこで寂寞とした雰囲気が漂う。遊園地の回の観覧車での二人のシーンといい、今回のラストのコマといい…
ドタバタとした中に、フッと、こう、もの寂しげなシーンが現れる。イブとタロウが幸せそうにしているシーンが特に。
この雰囲気も、自分にとってのこの作品の魅力の一つだ。
ところで、しつこく「うる星やつら」との関連について。
以前も書いたが、イブと「うる星やつら」のラムが似ているな、と感じた瞬間から、脳内では、イブのセリフが平野文さんのラムの声で、そしてイブの「タロウ」というセリフが「ダーリン」に勝手に変換されてしまうわけだが(最近はラムというと別のキャラを指す場合が多いらしいが、私としては、ラムは圧倒的に「うる星やつら」のラムである、ちなみにレムは某ドリームハンター) 。
そう思ってみると、タロウのセリフは古川登志夫さん演じる諸星あたるで再生されて違和感ない。
ただ、タロウと諸星あたるは、性格的に、少しだけ違うけれど。
「うる星やつら」は、ラブコメの側面もあったけれど、基本はSF何でもあり系ギャグコメディであって、ラムとあたるの関係は、確かに軸にはなっているけれど、匂わせるだけで表面的にはあまり出てこない。
「初恋ゾンビ」は、「うる星やつら」のいわば「ラブ」の部分を抽出したような、そんな物語のようにも思えてしまう。
※少年サンデーコミックス「うる星やつら」第3巻PART9「君待てども」より
ともあれ、次回からは新展開とのこと、いろいろダイナミックな動きがあったわけで、期待大、である。