私は何も考えない

人生詰んでるオヤジが、どうでもいいこと、いい加減なこと、つまらないこと、くだらないこと…を書き連ねるブログです。

「響け♪ユーフォニアム」第11話~おかえりオーディション

「響け♪ユーフォニアム」第11話~おかえりオーディション、素晴らしい回だった。

そして感動した。

「音」そのものがここまで重要なアニメは、未だかつて存在しなかった。
というか、ここまで「音」と正面から向き合ったアニメは、過去にはなかったと思う。

第11回「おかえりオーディション」、クライマックスは、何と言っても香織と麗奈のソロパートを賭けたオーディション場面。

香織は、ソロパートを確実に演奏する。当然のことながらミスはない。しかし凡庸。おそらく身内だろう、いくらかの拍手。
続いて麗奈。実に表情豊かに演奏し、香織との力量の差は歴然としている。観客である部員たちも、思わずはっとした表情で麗奈の演奏に聴き入る。複数の部員の目配せ、黄前、加藤によるわずかばかりの拍手。
本来なら、拍手の数でソロパートを誰が演奏するかを決めるはずで、そのルールに従えば、香織がソロパートを演奏することになる。
しかし、滝は、組織票を見透かしており、香織に「吹きますか?」と確認する。
麗奈の演奏を目の当たりにして、実力の差を認識させられた香織は、「吹けません」と答える。
滝は、麗奈をソロパート演奏者に任命する。麗奈「私がソロパートを吹きます」。

この一連の流れの中で、重要なのが、香織と麗奈の演奏。
慎重を期してか、はたまたこれが限界なのか凡庸な演奏に終始する香織に対し、伸び伸びと力強く、表情豊かに演奏する麗奈。
この2人の演奏の差を、この作品では実際の演奏を用いて表現している。ある意味直球勝負ではある。
もちろん、香織と麗奈の、演奏直前の口の動き、声にならない声、演奏中の表情、観客の反応、全て総合しての表現ではあるが、実際の演奏の音を用いることで、香織と麗奈との力量の差に対する説得力が数倍、いや、数百倍にも増している。

このような表現は、アニメ映像作成上の高度な技術があって、初めて成し得るものであることは、間違いないと思う。
単に音を聴かせるのではなく、人間が実際に演奏しているように見せるには、演奏と映像との完璧な同期が必要となるであろう。顔の各部の動き、指の動き、楽器の動き、顔以外の身体の動き、これらと音とが完全に同期していないと、嘘の演奏になってしまう。
京アニは、その技術によって、演奏の音そのものを見事に「アニメ映像」に取り込んで、この最高の表現を我々に提供してくれた。

ここまで音を使いこなしたアニメを、私は他に知らない。
…いや、一つだけあるな、「トムとジェリーピアノ・コンサート」。1947年のアカデミー賞受賞作品である。ま、これは一応、劇場公開作品であるし、時間は8分弱と短いが、制作期間や予算もあっただろうから、除外していいかと。

この音を使った演出といい、青春期の繊細な人間関係の表現といい、「響け♪ユーフォニアム」は、現時点での京アニの最高傑作であろうと思う。