漫画の記憶
子供の頃は、非常な田舎に住んでいたこともあり、娯楽が大変少なかった。
夏などは外に出て遊ぶこともできるので、まあいいが、冬となるとそれもなかなか難しく(ちなみに北海道なのだ)、自然、家に閉じこもることになる。
その中での重要な娯楽は、漫画であった。
親は漫画を読むタイプではないにも関わらず、ほんの少しだけ、漫画本が家にあって、そればかり読んでいた。
その「ほんの少し」の内訳は、「サザエさん」、「意地悪ばあさん」、そして、何故か「男おいどん」。
長谷川町子シリーズが家にあったのは、何となく分かる気がするが、なぜ「男おいどん」があったのか、今考えると不思議だ。
で、それらばかりを繰り返し読んでいたためか、いま、すっかり大人になってからも、シチュエーションに応じて、それらの漫画のセリフやら情景やらが思い浮かぶ。
例えば、何かの値段で「8000円」というのがあると、必ずと言っていいほど「男おいどん」のあるシーンが思い浮かぶ。
「男おいどん」の主人公である大山昇太が、女友達?の秋山さん(だったかな、秋山さんとしておきます)が落としたコンタクトを一緒に探しているうちに、誤ってそのコンタクトを踏んづけて割ってしまう(当時だからハードコンタクト)。
おいどん君は、それを隠すが、秋山さんが「あれ8000円もしたの、困ったな」みたいな発言をし、それを聞いたおいどん君が「ハッセンエン!おいどんの一ヶ月の生活費と同じくらいばい(この辺うろ覚え)」。
このシーンが妙に頭に残っている。
他にも沢山あって、もう一つ例を挙げると、「エビライス」のシーンがある。
おいどん君がサテンか何かのショーケースに、大ぶりのエビが沢山乗った「エビライス」(今でいうエビピラフみたいなものか)を発見、値段を見ると結構安く、これはラッキーと勇んでその店に入り「エビライス」を注文する。
で、出てきた「エビライス」は、ご飯の上に小さいエビが1つだけ鎮座する、詐欺みたいなもの。
このシーンも、妙に頭に残っていて、今でもショーケースのエビピラフを見ると、この「エビライス」のシーンを思い出す。
まぁ、何ていうか、子供の頃に叩き込まれた(というのも変だが)記憶というのは、一生ついて回るのかな、と、思う次第。
ちなみに、「男おいどん」は当時のコミックスで全9巻、もちろん全部読んだし、再び読みたいとも思うけれど、ラストの回を考えると、今ひとつ手が出せない。
松本零士先生は、「あれはハッピーエンドだ」と仰られるが、私には、とてもそうは思えないわけで。